過去10年にわたり、フィリピンにおける暗号資産の利用は、デジタル決済、送金および取引を中心に展開してきました。同国には海外就労者が多く、デジタルウォレットの普及も進んだことから、暗号資産の初期からの利用者にとっては、暗号資産の利用は自然なものとなっています。
しかし近年、人々の関心がブロックチェーン技術の別の応用である「トークン化」に少しずつ移っているのが現状です。すなわち、分散型台帳技術を用いて、従来の金融商品や権利をデジタル形式で表現する試みです。これは、ストラクチャード・ファイナンスを含む既存の資本市場を強化する技術レイヤーとして機能しまています。
ストラクチャード・ファイナンスにおけるトークン化の説明

創業および共同経営パートナー
Sarmiento Loriega Law Office
Metro Manila
トークン化とは、債券、債権やその他の収益を生む商品などの資産に関する権利を、分散型台帳上に記録されるデジタルトークンとして表現するプロセスです。資本市場において、トークンとは金融資産に対する所有権、または参加持分のデジタル表現として機能します。基礎となる法的権利は従来どおり契約、および規制枠組みにより規律される一方で、トークン化は発行、決済、記録管理、およびサービシングを効率化します。
こうした効率性は、金融資産をプールし、再パッケージ化したうえで、専門的な金融ストラクチャーを通じて投資家に分配するストラクチャード・ファイナンスにおいて特に重要となっています。ストラクチャード・ファイナンス取引では通常、債権、その他の金融資産を特別目的体(SPE)に移転し、同SPEが基礎資産に裏付けられた証券を発行します。
トークン化とは、真正売買、資産の隔離および投資家保護といった証券化の法的メカニズムを根本的に変えるものではありませんが、証券が発行・管理される技術インフラに影響する可能性があります。
フィリピンにおけるトークン化債券、ユーティリティ・トークン

パートナー
Sarmiento Loriega Law Office
Metro Manila
フィリピンにおけるトークン化の注目例として、2023年の財務局による初めてのトークン化国債(TTBs)の発行が挙げられます。同国債は政府の既存の証券登録制度に統合されています。この取組みは、トークン化が既存の資本市場インフラに完全に取って代わるのではなく、その枠内で実装できることを示しました。
トークン化された金融エコシステムの中では、ユーティリティ・トークンが補助的な役割を担うケースが多くあります。ユーティリティ・トークンは、デジタルプラットフォーム、またはサービスへのアクセス提供を目的として設計されています。これらのトークンは、取引手数料の支払い、ガバナンス参加の実現、またはブロックチェーンベースの発行プラットフォーム内での運用機能の円滑化に用いられます。ストラクチャード・ファイナンスのプラットフォームにおいては、発行、レポーティング、またはセカンダリー取引の運用における役割を担う場合があります。もっとも、ユーティリティ・トークンの法的分類の判断には慎重な分析が必要です。フィリピンの証券法上、ある商品が証券に該当するかどうかは、付された名称ではなく経済的実質によって判断されるからです。「ユーティリティ・トークン」と表示されたトークンであっても、別の作用に依拠して利益が生じるという期待のもとで資金が投下される場合は、証券とみなされる可能性があります。
トークン化されたストラクチャード・ファイナンスの規制枠組み

アソシエイト
Sarmiento Loriega Law Office
Metro Manila
フィリピンにおいて、ストラクチャード・ファイナンス、暗号資産およびトークン化商品を規律する規制環境は、近年大きく進化しています。
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- 2004年証券化法がストラクチャード・ファイナンスを規制します。同法は、債権プール、資産担保証券を発行するための特別目的体への移転および投資家保護に関する法的枠組みです。
- 証券規制法は、デジタルトークンが証券に該当するかを判断するための主要な法的枠組みです。トークン化商品が証券に該当する場合、同法に基づく登録、および開示要件を遵守しなければなりません。
- 証券取引委員会は、2025年に暗号資産サービスプロバイダーを規律する規則を制定し、暗号資産の取引、オファリング、および仲介等の活動を行う事業者に対する規制監督を整備しました。これらの規則は、公衆に提供される暗号資産が開示義務の対象となる可能性があり、また適切な場合には証券規制が適用される可能性があることを明確化しています。
- 金融システムの観点からは、フィリピン中央銀行(BSP)がBSP通達第1108号に基づいて、仮想資産サービスプロバイダーを規制しています。決済システム、またはデジタル資産移転を伴うトークン化金融活動は、証券規制の遵守に加えて、BSPの監督対象となる可能性があります。
- マネー・ローンダリング防止法は、暗号資産仲介業者に対して、顧客のデュー・ディリジェンス、および届出(報告)義務を課し、不法行為の収益の洗浄を防止するための強固な顧客識別システムの導入を求めています。
- 金融商品・サービス消費者保護法は、金融消費者を保護するための行為規範を定めています。
フィリピンのストラクチャード・ファイナンスにおけるトークン化の見通し
結論として、トークン化はフィリピンのストラクチャード・ファイナンスにおける進化的な発展であり、従来の証券化、および資本市場の実務を急進的に置き換えるというよりも、それらを補完し得るものです。
同時に、トークン化とフィリピンの金融システムとの統合が成功するかは、確立された法的枠組み、規制当局の監督および投資家保護の基準との慎重な整合に左右されるでしょう。
Maria Elizabeth E Peralta-Loriega は、Sarmiento Loriega Law Office in Metro Manilaの創業および共同経営パートナー、 Marie Jourgen B Endaluz はパートナー、そしてBrian Earl A Leshen はアソシエイトです
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