政策改革が変えるフィリピンのM&A戦略

    By Mark S Gorriceta・Kristine T Torres/Gorriceta Africa Cauton & Saavedra
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    フィリピンでは、近年の立法上および規制上の諸施策により、投資環境の制度的枠組みを強化しており、それにより、M&A活動の活発化と外国投資家の参入拡大がもたらされています。外国投資規制、税制上の優遇措置、資本金要件の変更は、投資家が投資機会を評価し、取引を構築して、リスクを配分する方法に影響を及ぼしています。本稿では、主要な改革と、それらがフィリピンにおける取引実務に及ぼす影響について概説します。

    フィリピンの外国投資規則が自由化

    Mark S Gorriceta
    Mark S Gorriceta
    チェアマン/マネージング・パートナー
    Gorriceta Africa Cauton & Saavedra
    Email: msgorriceta@gorricetalaw.com

    外国投資の自由化:フィリピンでは、外国投資制度に関する近年の改革により、多様な分野にわたって投資機会が拡大しています。公共サービス法(共和国法第11659号)の改正により、「公益事業」に分類される活動の範囲が狭められ、外国資本による所有制限が緩和されたことで、電気通信、航空、鉄道、地下鉄、海運、有料道路などの分野において、最大100%まで外国資本による所有が認められています。

    1991年外国投資法および小売自由化法の改正でも、市場参入要件を緩和し、特定分野での投資額の下限を引き下げることによって、外国投資の機会が拡大しました。共和国法第11647号によって外国投資法は改正され、外国資本が所有する国内市場向け事業について、最低払込資本金要件を20万米ドルから10万米ドルに引き下げ、また、先端技術を導入する企業または相当数のフィリピン人労働者を雇用する企業については、さらに低い資本要件を導入しました。これらの改革により、成長分野の事業、特に、テクノロジー主導型企業やスタートアップなど、従来は適用される資本要件を満たすことができなかった事業において外国投資の機会が拡大しました。

    これと並行して、共和国法第11595号が小売自由化法を改正し、外国資本が所有する小売企業に対する最低払込資本金要件を250万米ドルから2500万フィリピンペソ(40万5000米ドル)に引き下げるとともに、従来、外国小売業者に適用されていた最低純資産要件とグローバルな店舗展開実績要件を廃止しました。これらの改革によって市場参入の障壁は引き下げられ、特に消費者向けおよび小売関連ビジネスでの、外国投資の機会が広がりました。

    取引実務の観点から見ると、これらの改革は、外国資本にとってフィリピン市場をより参入しやすいものにするという、より広範な政策転換を示しています。これらの改正によって、資本金要件を引き下げ、参入要件を簡素化したことにより、外国からの投資を誘致できる企業の範囲は拡大したほか、中堅企業および成長段階にある企業を対象とする取引の実現可能性を高めました。

    M&Aを引き寄せるグリーンエネルギー:再生可能エネルギー分野は、近年の投資自由化措置により恩恵を受ける主要な分野として浮上しています。エネルギー省のフィリピン・エネルギー計画の下では、政府は国の発電電源構成に占める再生可能エネルギーの割合を2030年までに35%、2040年までに50%へ引き上げることを目標としています。一方、グリーンエネルギー・オークション・プログラムは、2035年までに追加で25GWの再生可能エネルギー発電容量の開発を促進することを目指しています。これらの政策上の取り組みは、エネルギー転換に対するフィリピンの長期的なコミットメントを示すものであり、当該分野への継続的な投資を促進するものと見込まれています。

    太陽光、風力、水力、海洋エネルギー資源による再生可能エネルギープロジェクトについて、最大100%まで外資所有を認める規制上の進展により、投資家の関心はさらに高まっています。加えて、エネルギー・バーチャル・ワンストップ・ショップのシステムにより、関係政府機関にまたがる申請、モニタリング、承認手続が一元化され、許認可手続をデジタル化し、合理化しました。一方、大統領令第18号(2023年)により、戦略的重要投資に指定されたプロジェクトについて、優先手続(グリーンレーン)が設置されました。

    これらの措置により、規制手続の効率性が向上するとともに、戦略投資家、インフラファンド、プライベートキャピタルに対する再生可能エネルギー資産の魅力が高まり、フィリピンのエネルギー市場全体にわたって、取引活動および投資機会が促進されています。

    フィリピン規制におけるM&Aのチェックポイント

    Kristine T Torres
    Kristine T Torres
    パートナー/ESG&プロジェクト・ファイナンス部門責任者
    Gorriceta Africa Cauton & Saavedra
    Email: kttorres@gorricetalaw.com

    M&Aのチェックポイントとしての競争法:フィリピンの企業結合制度は、同国におけるM&A取引の規制枠組みの重要な構成要素として進化を続けています。2026年3月から適用される当事者基準額は91億フィリピン・ペソ、取引基準額は38億フィリピン・ペソであり、両基準額はいずれも名目GDP成長率を反映して毎年見直されます。該当する基準を満たす取引は、完了前に義務的な届出および審査の対象となります。

    基準未満の取引についても、フィリピン競争委員会は、反競争効果を疑うに足る合理的な根拠がある場合には、職権により(motu proprio)取引を審査する権限を有しています。これらの動向は、フィリピンの企業結合制度の成熟が進んでいることを示すものであり、国内取引およびクロスボーダー取引の双方において、競争法コンプライアンスの重要性を改めて示すものです。

    税制改革:フィリピンの税制および投資優遇措置の枠組みは近年、大幅な改革が行われており、これは投資先としての同国の競争力強化に向けた政府の取り組みを反映したものです。企業復興税優遇法(CREATE法)は、国内法人および居住外国法人の法人所得税率を30%から25%に、また、要件を満たす中小企業については20%に引き下げ、一方で同国の財政上の優遇制度を合理化しました。CREATE MORE法は、利用可能な優遇措置の拡大および登録事業者に対する行政手続の簡素化を通じて、優遇措置の枠組みをさらに強化しました。これらの改革は、一体となって、税負担の軽減、優遇措置の確実性の向上、優先分野への投資支援を通じて、投資先としてのフィリピンの競争力向上を図るものです。

    環境・社会・ガバナンス(ESG):フィリピン証券取引委員会(SEC)は現在、上場会社および一定規模以上の非上場会社に対し、「サステナビリティ開示に関するフィリピン財務報告基準(Philippine Financial Reporting Standards on Sustainability Disclosures)」の遵守を義務付けており、大量のプラスチック廃棄物を発生させる事業者には、段階的なプラスチック・フットプリント削減目標の達成が求められています。金融面では、フィリピン中央銀行(BSP)の「サステナブル・ファイナンス・タクソノミー・ガイドライン(Sustainable Finance Taxonomy Guidelines)」により、銀行はその融資ポートフォリオ全体にわたるサステナビリティ・リスクの分類および報告を義務付けられています。M&Aにおいては、買収者は対象企業のESGおよび気候関連リスクのスクリーニングを行う傾向を強めており、優れたESG実績を、企業価値評価および取引意欲を高めるプラス要因と見なしています。

    フィンテックおよびデジタル金融サービス:デジタル決済およびフィンテックサービスの継続的な成長により、フィリピンのフィンテック事業、とりわけ決済プラットフォーム、電子ウォレット事業者、デジタルバンク、仮想資産サービスプロバイダー、オンライン融資プラットフォーム、デジタル金融インフラプロバイダーへの投資家の関心が高まっています。同時に、規制要件の進化に伴い、当該分野におけるM&A取引での許認可および規制遵守の重要性が高まっています。

    ライセンスの制限やモラトリアム(一時停止措置)は、規制対象事業者の戦略的価値をさらに高めています。フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas)が、デジタル銀行のライセンスについて件数の上限を維持したまま限定的に新規申請受付を再開している一方で、仮想資産サービス提供者およびオンライン融資プラットフォームに対する新規ライセンス申請については、引き続きモラトリアムが適用されています。その結果、買収および戦略的投資が市場参入の主要な経路として台頭しており、フィリピンにおける規制対象金融サービス事業を対象とするM&A活動の増加に寄与しています。

    改革が変えるフィリピンのM&A戦略

    近年の制度改革は、とりわけ再生可能エネルギー、インフラ、テクノロジー、金融サービス、小売といった分野において、より開放的かつ投資家にとって魅力的な規制環境への広範な転換を反映するものです。このようなM&Aへの影響は、エネルギー・天然資源分野において顕著に表れており、同分野は取引総量の29.7%を占め、これに消費者関連・小売分野が14.9%、工業分野が12.2%で続いています。同時に、規制当局は、競争、サステナビリティ、税制、ガバナンス、分野別のコンプライアンス要件に重点を置いています。

    投資家および買収者にとって、その影響は市場への参入にとどまりません。規制に関するデューデリジェンス、許認可分析、競争評価、優遇措置のプランニングは、M&A取引戦略の構成要素としてますます重要になっており、バリュエーション、ディールストラクチャー、実行リスク、買収後の統合に影響を及ぼしています。規制改革が引き続き進展する中、これらの検討事項は、フィリピンでのM&A活動の中心的位置を占めるものと考えられます。

    Gorriceta Africa Cauton & Saavedra
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