プロジェクトファイナンスとは、発電、天然資源開発等の大規模プロジェクトに対して金融機関が供与するシニアローンであって、リミテッド・リコース・ベースで実行され、プロジェクトからの収益(キャッシュフロー)を返済原資とするものをいう。
典型的には、スポンサーが特別目的会社(SPC)を設立し、SPCがレンダーから借入れを行い又は社債を発行するとともに、スポンサー等からエクイティ出資や劣後ローンの貸付を受けることで行われる。
このうち、金融機関によるシニアローンの貸付は「プロジェクトファイナンス」、社債の引き受けは「プロジェクトボンド」と呼ばれる。また、劣後(メザニン)ローンの貸付、株式を通じたエクイティ出資は、それぞれ「インフラデット」、「インフラエクイティ」と呼ばれることが多い。
2024年の世界のプロジェクトファイナンスにおける主幹事銀行(MLA:Mandated Lead Arranger)のリーグテーブルでは、日本の3メガバンク(MUFG、SMBC、Mizuho)がいずれもトップ10に入っている(Project Finance International, ”Global MLA Rankings 2024”)。
特徴

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プロジェクトファイナンスの特徴は、特定のプロジェクトを対象とし、返済原資が原則として当該プロジェクトから生じる収益(キャッシュフロー)に限定される点にある。
エクイティ出資を行うスポンサーが配当を通じてプロジェクトのアップサイドを享受する一方、レンダーの収益は、アレンジメントフィー等の各種手数料を除けば、原則として定額の約定利息に限られる。
加えて、シニアレンダーの唯一の返済原資は基本的に借入人(SPC)のキャッシュフローであり、リスク許容度も限定的である。借入人に残されたリスクは最終的にシニアレンダーおよびスポンサーが負担することになるため、プロジェクトリスクを借入人(SPC)以外の他の契約当事者に転嫁(パススルー)するか、プロジェクトのストラクチャーの中で除去又は軽減することが不可欠となる。このように、案件を「融資可能(Bankable)」なものとなるように組成する点に、プロジェクトファイナンスの本質がある。
FITからFIPへの移行
日本の再生可能エネルギー市場は、政府支援による固定価格買取制度(FIT)から、フィードインプレミアム制度(FIP)及びコーポレーPPAを中心とする市場ベースの枠組みへの移行期にある。
2012年に導入されたFITは、オフテイカー(電気事業者)に対し、再生可能エネルギー源により発電された電気を、一定期間、固定価格で、全量を買い取ることを義務付ける制度であり、発電事業者のオフテイクリスク(価格リスク・買取量リスク)を実質的に排除し、日本の再エネ市場を牽引してきた。このモデルは現在、段階的に廃止されつつある。
2026年2月、経済産業省(調達価格等算定委員会)は、2027年度以降は地上設置型の事業用太陽光発電(10kW以上)をFIT/FIPの新規支援対象から除外する方針を確定した。もっとも、既存FIT認定設備をFIPへ移行させること(いわゆる「FIP転」)は引き続き可能である。
今後は、屋根設置型太陽光、ペロブスカイト太陽電池、FIPと組み合わせた市場統合型のコーポレートPPA等に政策支援の重点が移ると考えられる。
FIPは、発電事業者が卸電力市場(日本卸電力取引所(JEPX))又は相対取引で得る売電収入に、一定のプレミアムを上乗せする制度である。FITと異なり、FIPは売電価格自体を保証するわけではない。
FIPにはいくつかの重要な商業上の利点がある。発電事業者は、蓄電池を活用し市場価格の高い時間帯に売電することで収益を最適化できるほか、政府の補助金プログラムの恩恵を受けることができる。さらに、2026年度以降、経済産業省が新たに運用を開始する出力制御順位ルールの下で、FIP電源は、FIT電源よりも出力制御を受けにくくなることが見込まれている。
FIPの下では相対取引が可能であるため、その一形態としてコーポレートPPAが可能となる。
コーポレートPPAとバーチャルPPA
コーポレートPPAとは、発電事業者と企業・地方公共団体等の需要家(電気利用者)との間で締結される、中長期の固定価格での電力受給契約のことをいう。コーポレートPPAは世界的には比較的普及しているが、日本では、差金決済契約(Contract for Difference, ”CfD”)として構築されるバーチャルPPAについて明確な法的枠組みが整備されたのはごく最近のことである。
2022年、経済産業省は、一定の要件を満たすバーチャルPPAが商品先物取引法上の店頭商品デリバティブ取引に該当しないことを確認した。さらに、2025年には、企業会計基準委員会(ASBJ)が、バーチャルPPA(一定の非化石価値の購入取引)について需要家側においては金融派生商品(デリバティブ)としての会計処理は不要であることを明確化した。
これらにより、日本におけるバーチャルPPAの法務・会計上の予見可能性は高まりつつある。日本で公表されたコーポレートPPAは、2022年の30件(うちバーチャルPPA6件)から、2025年には148件(うちバーチャルPPA33件)へと着実に増加している。
コーポレートPPAにおける融資可能性(Bankability)
コーポレートPPAを前提とする再生可能エネルギープロジェクトファイナンスの観点からは、FIPと組み合わせたものは日本において次第に「融資可能(Bankable)」なものとなりつつある一方、FIPを伴わないコーポレートPPAは依然として限定的である。
金融機関としては、①需要家が10~20年に及ぶ長期契約を履行できる信用力を有するか、②保証、信用補完、インセンティブ制度等により需要家の信用リスクを補完できるか、③中途解約時の違約金又は補償条項が元利金残高を十分にカバーする内容となっているか等を総合的に考慮し、融資可能性(Bankability)を判断することとなる。
日本がFITから市場ベースの枠組みへの移行を完了するにつれ、FIPと組み合わせたコーポレートPPAが、再生可能エネルギープロジェクトファイナンスにおける優位的なストラクチャーになると予想される。
プロジェクト関連契約

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(1) 基本的な考え方 電力受給契約(PPA)、EPC契約、O&M契約、保険契約、燃料供給契約及び土地利用権設定契約におけるプロジェクトリスク分配の大原則は、当該リスクを最も効率的にコントロールできる当事者に負担させるべきという点にある。
その際の基本的な考え方は、Back to Back(バック・トゥ・バック)、すなわち、借入人のレベルで発生したリスクを他の契約当事者に転嫁(パススルー)することで、借入人にリスクが残らないよう、各契約の相互関係をストラクチャリングすることである。
(2) PPA PPAのポイントは、発電事業者が、発電した電力を、どれだけの期間、どのような価格で、どれだけの数量を販売できるかである。すなわち、価格リスク・買取量リスクを最小化し、電力をTake or Pay(テイクオアペイ)条件で販売できることが重要である。FITの下では、電気事業者は、調達期間中、全量を、固定価格で買い取る義務を負っていたが、非FIT・非FIPの再エネ発電事業(コーポレートPPAを含む)では、プロジェクト期間を通じて、十分な数量が固定価格で保証されていることを確認しなければならない。「Take or Pay(テイクオアペイ)」とは、発電事業者が電力を供給可能な状態にある限り、オフテイカーは、受電したか否かにかかわらず、電力料金のうち基本料金を支払わなければならないことをいう。
また、オフテイカー(電気事業者)の信用力も重要な要素である。オフテイカー単独では十分な信用力を欠く場合には、親会社やその他の第三者の保証といった信用補完が必要となる場合もある。
(3) EPC契約 EPC契約のポイントは、①単独の工事請負業者又は建設共同企業体(JV)に一括発注すること、②発電施設等の完成及び商業運転開始日(COD)までに必要な全ての工事をパッケージとしてカバーし、運転可能な状態で引き渡されるFull Turn Key(フルターンキー)となっていること、③コストを固定価格とすることで、建設費、資材費、人件費等の上昇リスクを工事請負業者に負担させ、コストオーバーランを防止すること、④完工期限を明記し(Date Certain)、タイムオーバーランを防止すること、である。
①は、Single Point Responsibility(単一責任)の原則と呼ばれる。風力発電では、タービン供給業者と工事請負業者が異なるのが通常であり、タービン供給業者がタービンの供給や据付を行い、工事請負業者が基礎工事を含むBOP(バランス・オブ・プラント)工事を実施する。
工事を複数の請負業者に分割して発注する場合(いわゆる「バラコン」)、後日責任の所在をめぐる紛争が生じるリスク(インターフェースリスク)がある。可能な限り、施工全体について責任を負い、工事全体の調整を担う者との間でコンストラクションマネジメント契約を締結することが望ましい。
引渡し後の責任に関しては、契約不適合責任及び性能保証も重要である。前者は、建設工事そのものや機器の欠陥をカバーするものであるのに対し、後者はさらに進んで、意図された性能が達成できなかった場合をより広くカバーするものである。
風力発電では、契約不適合責任については、同一機種・同一ロットの複数のタービンについて連続的欠陥(Serial Defect)条項が置かれることがある。性能保証については、パワーカーブ保証や稼働率保証といった一定の保証値を定め、その未達分を基準として逸失利益を補償する旨が規定されることもある。
(4) 融資関連契約 融資関連契約は、シニアローン契約、担保関連契約、金利スワップ契約、スポンサーサポート契約、直接協定(Direct Agreement)から構成される。
シニアローン契約は、通常、複数の銀行団によるシンジケート・ローンの形態をとり、金銭消費貸借契約として文書化される。その条項には、財務コベナンツ(財務制限条項)と、ステップ・インを可能とするよう設計された期限の利益喪失事由が含まれる。財務コベナンツでは、DSCR(デット・サービス・カバレッジ・レシオ)と、D/E Ratio(デット・エクイティ比率)が定められる。
(5) 担保関連契約 シニアレンダーは、プロジェクトを構成する借入人の全ての資産、権利、契約上の地位に担保権を設定するのが原則である(「全資産担保の原則」)。これは、貸付金の回収にはプロジェクトの継続が不可欠であること、また、ステップ・インの実効性を確保するためには契約上の地位を含めて担保権を設定しておく必要があることによる。
なお、2026年5月25日に施行された事業性融資推進法に基づく企業価値担保権は、会社の全財産を一体として一つの担保権の目的とすることを認めるものであり、全資産担保の原則と親和的である。もっとも、企業価値担保権者の同意を得ずに行われた重要な財産の処分は無効とされるものの、善意無重過失の第三者には対抗できない点、企業価値担保権の実行には裁判所の手続を要し、時間と費用がかかる点等につき留意が必要である。
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